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2026年度展開ゼミ 第11回 議事録

7月8日
読了時間: 9分

2026年度展開ゼミ第11回の議事録です。


日時:2026年7月1日(水)14:50-16:20

会場:DW704

参加者:13名 髙橋、沖村班(4名)、安田班(4名)、山田班(4名)


1 グループ発表

(1)山田班

・発表者:山田

[概要]

 「消費」を切り口として社会階層や貧困、格差との関連を明らかにすることを目的とし、5冊の参考文献をもとに抽出した問いを報告した。具体的には、「消費は本当に『自由な選択』なのか、それとも社会階層やジェンダーなどの属性によって選択肢が制約(選ばされている)されているのか」という調査の意義を提示した。そのうえで、「シングルマザーの雇用政策について」「親の離婚と失業の関係性」「大学生のうち、学生生活費のすべてが親負担の学生たちは自らの収入や親からの支給品をどのような割合で使用しているのか」「生活保護受給世帯は生活保護から抜け出したいのか」といった疑問点を列挙した。今後は研究テーマと調査方法を具体化させ、ブルデューの理論などの先行研究をただなぞるだけではない独自の視点で調査を進めていきたいという方針を共有した。

〈質疑応答・コメント〉

質問1:親の離婚と失業の関係性について疑問を持っているということだが、具体的にどのような点が気になっているのか。

回答1:参考文献より、親の離婚と失業の関係性については、単に非正規雇用だから貧困というわけではなく、十分な教育達成がなされていない(初職が非正規になった場合、そこから正規雇用に変わるのが難しい)という問題が挟まっていると指摘されていた。本の中では経済資本の差(母子家庭での経済的困難)による影響が語られていたが、自分たちは家族や周囲のサポートといった「社会資本の差」が影響しているのではないかという仮説を立てている。そこに注目してみたいが、もしやるとなったら質的調査の手法やサンプリングをどうするか考えている段階である。

質問2:発表の中で出てきた「社会階層」と「社会属性」という言葉の意味には、具体的にどのような違いがあるのか。

回答2:社会階層は「実家の家計の裕福さや、保有している経済資本・社会資本の量の違い」を指し、社会属性は「家族構成(既婚、一人暮らし、未婚など)といったその人が持つ性質の違い」を指して使い分けている。

コメント1:参考文献と研究の意義がしっかりと組み立てられている。ただ、「生活保護を受けている当事者がどう思っているか」というアプローチや、生活保護受給世帯に直接注目して調査を行うのは現実的に難しそうである。

コメント2:自分たちの班(広告・マーケティング)も消費に関連するテーマを扱っているので、関心の方向性が似ていると感じた。

〈先生からの補足〉

 今回の疑問点の中で、どれが調べたらすぐ分かること(サーチ)で、どれが研究に値すること(リサーチ)なのかという問いの分類は、難しければ一度教員と一緒に整理した方が良い。

 全体として「貧困と消費」というテーマで進めるのかという点を確認しつつ、コメントにもあった通り生活保護受給者本人への直接インタビューはハードルが高い。もしやるのであれば、当事者ではなく「世間が何をもって生活保護のバッシングをしているのか」という周囲の視点(言説分析など)に変えれば十分にリサーチとして成立する。

 また、「大学生のお金の使い方」についてはすでに多くの先行研究がある領域であり、最近のトレンドである資産運用や投資の知識に関する話、あるいは小中高大学生を対象にした金銭感覚の話に広げるのも面白い。

 たとえば、レシートを活用してできる調査もある。イオンモールで実施予定のイベントのように、「食料品が何個あったか」をグラフ化するような身近な作業でも、大学生が本気で取り組み、それをさらに社会的属性と組み合わせてデータ分析を行えば、十分に立派な社会学の研究として成立する。テーマ決定の材料は揃いつつあるため、ここからどうリサーチの問いにもっていくかについてはコツや慣れが必要なため、遠慮なく教員を頼ってほしい。


(2)沖村班

・発表者:沖村

[概要]

 広告に関するテーマで研究を進めるにあたり、参考文献(『広告で社会学』『移動者マーケティング』『よくわかる現代マーケティング』など)から得た疑問点や仮説を報告した。具体的には、「ダイエット広告の男女による強調点の違い」「育児雑誌における母親の生き方の描かれ方」「駅構内の紙広告とデジタルサイネージの記憶への残り方の違いや、女性向け広告の多さ」「コモディティにおける広告の差異」「アルコール飲料広告における年代別のライフスタイルの描かれ方」など、多岐にわたる問いが共有された。

〈質疑応答・コメント〉

質問1:スライドにあった「移動者インサイト」と「ブランドインサイト」とはどういう意味か。

回答1:移動者インサイトは「移動状態にある移動者の行動原理や心理」、ブランドインサイトは「対象となるブランドの商品やサービスに対して生活者が感じている価値」を指している。

質問2:「行動を起こさせる広告」とあったが、ここでの「行動」とは商品を購入することを指しているのか。

回答2:その通りである。

質問3:コモディティ(商品間の差を比較できないもの)の具体的なサービスや例としては、どういったものが挙げられるか。

回答3:本の中で例として出ているのは石油やティッシュペーパーである。物としては差がなく、どこで買っても一緒というものである。パッケージと値段しか変わらないようなものを指している。

質問4:「推し活」はどのような経緯でマーケティングの話と繋がったのか。

回答4:ポストモダンのマーケティングでは「商品の性能ではなく、所有すること自体や購入する経験・快楽が重視される」と比較されていた。そこから、缶バッジをたくさん集める行為や、とにかく商品を買う経験自体に意味を見出す「推し活でお金を使う人の心理」と地続きなのではないかと解釈して繋げた。

コメント1:移動者マーケティングに関する問いについて、「記憶に残りやすいか」など、人に注目しすぎると心理学に寄ってしまうため、構造やデータを中心に見るアプローチにした方が社会学らしくなるのではないか。

コメント2:例えば、「駅に女性向け広告が多いか」という問いは検索したらすぐ分かってしまう可能性があると思う。サーチ・リサーチ・クエスチョンをもう少々細かく洗い出すとさらに良い問いを選べるのではないか。

コメント3:「ダイエット広告」などでは、男性向け・女性向けの明確な基準を作れば調査可能になるのではないか。また、広告はSNS、CM、チラシなどジャンルが広くて大変なため、対象をどれかに絞った方が進めやすいのではないか。

コメント4:駅の地図を用意して広告があった場所にマークをつけるような調査手法は、視覚的にも面白くなりそうである。また、「なぜその場所にあるのか」という理由まで突き詰めるとリサーチとして強くなるのではないか。

〈先生からの補足〉

 ここで出されている案は非常に魅力的である。ただし指摘もあった通り、「記憶に残りやすいか」「行動を起こさせるか(売れるか)」といった、人の心理的効果や購買行動を証明しようとする問いは社会心理学の分野であり、厳密にやろうとすると人を集めた実験が必要になる。大学生の調査規模では非常に難しいため、あまりお勧めしない。

 一方で、広告が「誰に向け、どのようなメッセージを、どのような場所で発信しているか」というメッセージの構造を調べる方向性に工夫すれば、十分に実現可能である。たとえば、「ダイエット広告の煽り文句や画像の分析」「育児雑誌(たまごクラブ・ひよこクラブ等)における男性向け広告の有無や、男女の描かれ方の比較」「駅構内の広告を記録し、どういう位置に誰向けの広告があるかの配置分析」「コモディティ商品(水や緑茶など)のキャッチコピーに見るストーリー性の分析」「アルコール広告における年代別のライフスタイルの分析」など、対象を絞ることで色々なテーマが成り立ち得る。効果を調べるのではなく、そこに載せられているメッセージそのものに注目すると良い。


(3)安田班

・発表者:松原

[概要]

 「仕事」という広いテーマの中から、現在迷っている二つの候補について報告した。一つ目の案は「就職氷河期世代の語られ方の変化について」であり、元々は本人の努力不足とされていた世間の見方が、なぜ近年「かわいそう」という文脈に変化したのか、その経緯を新聞データベース等から分析したいという旨を共有した。二つ目の案は「エッセンシャルワーカーの社会的な評価について」であり、医療や介護などの感情労働を伴う重要な仕事が、なぜ低評価や低賃金などの冷たい扱いを受けやすいのかという疑問から、コロナ禍以降に普及したこの曖昧な言葉の定義を整理しつつ、テキストマイニングや自由記述のアンケート調査を用いて人々の捉え方を分析したいという方針を報告した。

〈質疑応答・コメント〉

質問1:エッセンシャルワーカーの中に、医者は含まれるのか。

回答1:定義によって医師を含む場合と、看護師のみを指す場合などバラつきがある。その曖昧な定義自体をまず整理し直すことにも、この研究の意義があると考えている。

質問2:具体的には、どのようなアンケート調査を行う予定か。

回答2:大学内で「エッセンシャルワーカーとは[  ]である」の空欄を埋めてもらうような自由記述の質問紙調査を行い、学生がエッセンシャルワーカーをどう捉えているかを集めて分析することを想定している。

コメント1:エッセンシャルワーカーの注目や評価の低さに関しては、ジェンダーの授業でも扱った「介護=家庭内の無償労働の延長線上として捉えられがち」という視点も背景に関係しているのではないか。

コメント2:新聞データベースを使う際、事実関係は同じでも新聞社によって社説などのスタンスが真逆になることがあるため、複数の新聞社を比較対象に入れた方が良い。

コメント3:他学部や一般の人からアンケートを取ることで、意外なイメージを掴めそうで良い。班員4人の満場一致でエッセンシャルワーカーの方が面白そうという意見になったが、テーマの整理やアプローチが少し難しそうという印象も受けた。

コメント4:氷河期世代の方はすでに研究され尽くしている感がある。ただ、「かわいそう」という目線をどう客観的に判断するのかが気になる。また、自分たちの班もエッセンシャルワーカーの方が面白そうだと思うが大変そうだと感じた。

〈先生からの補足〉

 どちらのテーマも面白く、実現可能であるため、自分たちがどちらであればより頑張れそうかで決めてほしい。

 調査を進めるうえでの注意点として、コメントにあったような「複数の新聞社を比較する」や「駅の広告を一駅だけで終らせない」というのは、データを扱ううえで当然の大前提である。全国三紙の一定期間の記事をすべて網羅するなど、基本的にはデータ量が必要になる。参考までに、過去にSNS分析を行った先輩のグループは1万4千件以上のデータを集めており、それくらいの膨大な労力が要求されることを覚悟しておく必要がある。「手軽にやれそうか」を判断軸にするのは避けた方が良い。

 また、文章完成型アンケートは曖昧な概念を測定する手法として有効だが、「広告についてどう思うか」といった安易な目的でアンケート手法に飛びつくのはよろしくない。明らかにしたい問いと調査手法が合致しているかを精査することが重要である。分析データの収集にはかなり時間と労力がかかるため、調査方法については早めに決断を下してほしい。


2 まとめ

 各班ともに参考文献をもとに問題意識を整理しているものの、リサーチになる具体的な問いを立てることに苦労している様子が見受けられた。次回までに研究テーマとリサーチクエスチョンを確定させ、さらに文献を読み進めていきたい。


作成:安田

編集:沖村

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