2025年度基幹ゼミ 第9回 議事録
- Kanaet-Lab
- 6月16日
- 読了時間: 5分
2025年度基幹ゼミ第9回の議事録です。
日時:2025年6月11日(水)14:50-16:20
会場:DW704
参加者:12名 髙橋、榊原班(4名)、田中班(4名)、溝田班(4名)
欠席者:2名
1 連絡事項
・ゼミ合宿の日程について
・小学生の宿題サポートのイベントについて
2 グループ発表
(1)田中班
・発表者:田中優衣
・課題本:『社会関係資本――現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』
・発表範囲:第3章「隘路の散策」
[概要]
社会関係資本とは、不平等に偏在する資産であると同時に、不平等をさらに加速させるために一部の人間が利用するメカニズムである。社会関係資本はある局面では正の結果を、別の局面では負の結果を生むことがある。
〈質疑応答〉
質問1:「社会関係資本は人種・民族的な不平等にも加担している」とはどういうことか。
回答1:民族的にアフリカ人であると、白人に接する機会が減るため、不平等である。
(2)田中班
・発表者:川崎稜汰
・課題本:『社会関係資本――現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』
・発表範囲:第4章「インターネットは社会関係資本を破壊するのか」
[概要]
パットナムはテレビ視聴の増加によりアメリカの人々の市民参加が減少し、社会関係資本が衰退しているのではないかという主張をした。しかし、様々な社会学者の人がその意見に反対し、地域や世代によって傾向は異なるため必ずしも社会関係資本が衰退しているとは限らないと論じた。今現在も発達しているSNSやインターネットは社会関係資本を弱めるものだと最初は思われていたが実際には新しい側面を見出すこともできることがわかる。
〈質疑応答〉
質問1:この章は、基本的にアメリカの話か。
回答1:アメリカの話である。
質問2:「SNSは橋渡し型・結束型の両方を助けている」とあるが、根拠はあるか。
回答2:助けているというより、Facebookなどの研究から関連しているといえる。
〈先生からの補足〉
・SNSがきっかけで社会関係資本への関心が高まり、研究も盛んにおこなわれた。
(3)溝田班
・発表者:安田胡春
・課題本:『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係――社会関係資本の光と影』
・発表範囲:第7章「行政と住民はなぜ距離があるのか」
[概要]
行政の内部には意図的に住民との接触を避けようとするような姿勢が感じられる。行政組織は硬直的で外部性に欠ける結束型に偏ったアンバランスなSCを持っている。SCから生じるダークサイドへの対策として、住民から積極的に橋渡し型SCを築いていくような働きかけが必要である。
〈質疑応答〉
質問1:「住民側から橋渡し型SCを築いていく働きかけ」の実例はあるか。
回答1:実例は載っておらず、今後の課題として取り上げられている。
(4)溝田班
・発表者:安田胡春
・課題本:『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係――社会関係資本の光と影』
・発表範囲:第11章「“遠慮がちな”ソーシャル・キャピタル再訪」
[概要]
地域のコミュニティのSCのあり方は光と影の二側面を持ち、ただ否定すべきものではなく地域において重要な役割も持っている。保健補導員制度は“遠慮がちな”SCで成り立っている「古い」ものではあるが、人々の地域とのつながりや高齢者の良好な健康状態に影響を与えている。
〈質疑応答〉
質問1:地域コミュニティのあり方について、保健補導員以外の具体例はあるか。
回答1:実例はないが、2009年に地域とのつながりの重要性を示す研究をした人はいる。
質問2:全国的に保健補導員はどれほどの規模でいるのか。
回答2:本書には長野県外の記載はない。長野県では、累計7700人ほど参加した。
質問3:「本人だけでなく、男性の家族にも影響」とあるが、男性は参加できないのか。
回答3:最初60年間程は女性のみだったが、2016年からは男性もいる。
〈先生からの補足〉
・「すぐやる課」がはじめて設置されたのは千葉県松戸市で、ドラックストア「マツモトキヨシ」の創業者である松本清が市長時代の1969年だった。
・本章で紹介されたアンケートの回収率はかなり良い、30~40%くらいが多い。
(5)榊原班
・発表者:榊原晴香
・課題本:『ソーシャル・キャピタルと社会――社会学における研究のフロンティア』
・発表範囲:第6章「就職活動で縁故は役立つのか―職業達成とソーシャル・キャピタル」
[概要]
縁故は就職活動ではマイナスの効果をもたらす。しかし、最終学歴にかかわらず、職業達成が高まることもわかった。ソーシャル・キャピタルは、不平等を加速させる一方で、「平等化」させる側面もある。
〈質疑応答〉
質問1:「従業先の規模が小さくなりがち」とは、小さい会社になりがちということであるか。
回答1:そういうことである。
(6)榊原班
・発表者:榊原晴香
・発表範囲:第7章「移民受け入れの制度的文脈と人間関係―日系ブラジル人の事例から」
[概要]
ブラジル人の多くは、非正規雇用の労働に従事している。そこで、正規雇用への移動に効果的なのは日本人との橋渡し型社会関係資本である。一方で、精神的健康の改善に役立つのは結束型社会関係資本である。
〈質疑応答〉
質問1:日系ブラジル人のネットワークとは、日本人のネットワークか。日系ブラジル人のみのネットワークか。
回答1:回答者の八割が親しい人にブラジル人を挙げていることから、同じ民族同士のネットワークであるとわかる。
〈先生からの補足〉
・縁故によって仕事を見つけるプロセスは、たとえば『ヤンチャな子らのエスノグラフィー』に詳細に記述されている。
3 まとめ
個人の持つ橋渡し型ソーシャル・キャピタルの規模が大きければ大きいほど有利に働くように思いがちだが、ソーシャル・キャピタルには二面性があり、結束型ソーシャル・キャピタルとのバランスが大切であるとわかった。就職活動での縁故は、「よくないもの」という認識しかなかったが、職業達成を高めるということは考えたこともなく、驚いた。また、職業ソーシャル・キャピタルがセーフティーネットとしての役割を果たすということは納得できる部分もあり、興味深かった。
作成:名古
編集:榊原