2025年度基幹ゼミ 第7回 議事録
- Kanaet-Lab
- 6月4日
- 読了時間: 5分
2025年度基幹ゼミ第7回の議事録です。
日時:2025年5月28日(水)14:50-16:20
会場:DW704
参加者:15名 髙橋、榊原班(5名)、田中班(4名)、溝田班(5名)
2 グループ発表
(1)田中班
・発表者:齋木
・課題本:『社会関係資本――現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』
・発表範囲:第2章「人脈の力」
[概要]
社会関係資本と教育、経済、健康、犯罪の四つのテーマでは多くの場合、強い正の相関がみられる。社会関係資本での信頼は不可欠なものとしてではなく、結果や原因というような独立因子として扱うべきである。
〈質疑応答〉
質問1:強い紐帯は就職活動でどう有効なのか。
回答1:応募時点での面接や内定辞退の減少、採用コストを抑える点で有効である。
質問2:信頼は社会関係資本に不可欠ではなく、原因や結果の独立因子として扱うことが最善であるとした理由は何か。
回答2:信頼を不可欠なものか独立のものとするかを考察した際に、信頼関係があると社会関係資本が成り立つ場合と、社会関係資本があるから信頼が生まれる2つの場合があった。そのため、信頼は社会関係資本に不可欠というよりは独立したものと捉えるのが妥当である。
(2)溝田班
・発表者:溝田
・課題本:『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係――社会関係資本の光と影』
・発表範囲:第3章「ソーシャル・キャピタルの『豊かさ』とは――強い紐帯と弱い紐帯のバランス、信頼の範囲」
[概要]
「ソーシャル・キャピタル(SC)が豊かな社会」を構築しようとするならば、内集団的閉鎖性の原理と橋渡し的開放性の原理を過不足なく統合する必要がある。今後の社会には、社会における共通の問題に対して自発的協力と促し、ボトムアップの社会構造を復活させることが求められる。
〈質疑応答〉
質問1:一般的信頼の定義は何か。
回答1:社会全体に対する信頼のことを定義する。
質問2:第三次集団の具体例を知りたい。
回答2:巨大組織の従業員などの膨大な人数の集団のこと。
質問3:第三次集団は企業に限定されるのか。
回答3:本では組織目的のある集団であるとされている。企業、団体など。
〈先生からの補足〉
・質問2、3で取り上げられた第三次集団についての補足として、第三次集団の例としてインターネット上での繋がりが挙げられた。
・第二次集団、第三次集団は必ず弱い紐帯か?という質問があったが、必ずしもそうとは限らない。しかし、その傾向はある。
発表者:溝田
・課題本:『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係――社会関係資本の光と影』
・発表範囲:第4章「社会ネットワークと社会的伝染――ソーシャル・キャピタルの構造的側面」
[概要]
社会ネットワーク構造への関心が高まるなか、社会的つながりによる社会的帰結が、ポジティブなものであるかネガティブなものであるかは、注目しているアウトカムやネットワーク構造的特徴に依存することが示された。
〈質疑応答〉
質問1:「面倒くさい行動」の具体例と、なぜ「面倒くさい行動」には弱い紐帯が不十分であるのか知りたい。
回答1:具体例として学校で行われる挨拶キャンペーンへの参加がある。強い紐帯があれば協力が促進されるが、弱い紐帯の場合はそれに参加しないことによるデメリットが特にない場合は協力を促進させるには不十分となる。
質問2:「閉じたネットワーク」と「開いたネットワーク」について知りたい。
回答2:「閉じたネットワーク」は緊密なネットワークであり、例えば日本の農村部が挙げられる。このようなネットワークでは協力が重要視され、制裁を与えることが容易である。「開いたネットワーク」は、自由度が高く離脱可能なもので、閉じたネットワークと比較して規範がゆるい。そのため、外部から人が入りやすいという特徴がある。
〈先生からの補足〉
・「閉じたネットワーク」についての補足として、余所者を受け入れやすいかそうでないかと考えると理解しやすい。
(3)榊原班
・発表者:柏原
・課題本:『ソーシャル・キャピタルと社会――社会学における研究のフロンティア』
・発表範囲:第2章「信頼のレベルと信頼の範囲」
[概要]
一般的信頼はソーシャル・キャピタルの構成要素であり、社会の経済性を高める。特に信頼の範囲はソーシャル・キャピタルの指標に適切である。また、その範囲は基礎集団を土台として開放的集団へ参加することで広がる。
〈質疑応答〉
質問1:地域レベルにおける他者の信頼の基準値の意味を教えてほしい
回答1:稲葉陽二(2013)「ソーシャル・キャピタルの制作含意―その醸成要因と地域差の研究」に基づいて行った「暮らしの安心・信頼・社会参加に関するアンケート」の郵送調査におけるデータを基準としている。
〈先生からの補足〉
・過剰な集団意識の例として宗教がよく取り上げられるのは、欧米の研究者がキリスト教の存在を前提に話が進んでいるからである
3)榊原班
・発表者:柏原
・課題本:『ソーシャル・キャピタルと社会――社会学における研究のフロンティア』
・発表範囲:第3章「人間関係の変容と孤立」
[概要]
関係の選択化は孤立化による血縁関係以外のサポート源や選ばれない不安への対処法などが注目されるようになった。しかし、地域やボランティアなどはサポート源として期待通りの効果は得られなかったため、今後は個人を尊重した支援が必要である。
〈質疑応答〉
質問1:「人々が濃密な近所づきあいを期待していない」また「ボランティアの気運の高まりもみられない」というのは、どのようなデータを根拠にしているのか。
回答1:「人々が濃密な近所づきあいを期待していない」という結論は、内閣府の「国民生活選好度調査」における2000年と2007年を比較したときの結果とNHK放送文化研究所の「日本人の意識調査」を基にしている。また「ボランティアの気運の高まりもみられない」という結論は、総務省の「社会生活基本調査」を基にしている。
質問2:日本と国外で孤独に対する敏感さは異なるか。
回答2:本書には記載がないため、答えられない。
3 まとめ
社会関係資本はメリットとデメリットの両方があり、注目するアウトカムにより結果の良し悪しがそれぞれ異なる。よって、一概にその有効性について言及できるものではないと思った。また、繋がりの強さに関しても同じことがいえると感じた。
作成:田中
編集:榊原