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2025年度基幹ゼミ 第10回 議事録

  • Kanaet-Lab
  • 6月25日
  • 読了時間: 5分

2025年度基幹ゼミ第10回の議事録です。


日時:2025年6月18日(水)14:50-16:20

会場:DW704

参加者:14名 髙橋、榊原班(5名)、田中班(4名)、溝田班(5名)


1 連絡事項

・リサーチ演習について


2 グループ発表

(1)田中班

・発表者:齋木

・課題本:『社会関係資本――現代社会の人脈・信頼・コミュニティ』

・発表範囲:第5章「社会関係資本の政策と実践」

[概要]

 社会関係資本のための政策には負の側面がある。しかし、政策は役割を持っており、必要なものであるといえる。社会関係資本の測定は難しく、多くの課題がある。政策は教育や社会的孤立解消の側面で実施されており、政府は支援者としての役割を果たすべきである。

〈質疑応答〉

質問1:政策が必要な理由として、重要性が認識されているから無視できないとあるが、誰から認識されているのか。

回答1:一般的に認識されているということ。

質問2:社会的学習の具体例は何か。

回答2:発表で取り上げた以外にも多様な例がある。

質問3:政策が必要な理由として、政策が社会関係資本に影響を与えているとあるが、どのような政策か。

回答3:ボランティアセクターへの支援や、学校でのシティズンシップ教育など。

〈先生からの補足〉

・歴史的に人間関係に社会的関心が高まることが度々あった。戦後であれば、急激な都市化に際したアメリカで、都市の人間関係に注目が集まり、都市社会学の研究が豊富に蓄積された。とりわけシカゴ大学の研究者を中心としたシカゴ学派が有名である。


(2)溝田班

・発表者:岡田

・課題本:『ソーシャル・キャピタルからみた人間関係――社会関係資本の光と影』

・発表範囲:第12章「親子を取り巻くつながりは生きる力を高めることができるのか」

[概要]

 子供のキャリア資本は家庭の影響を強く受けて醸成される。家庭生活の質は可変性に乏しいため、学校などの家庭外社会関係資本により機能を代替できる。家庭外社会関係資本では、世代間閉鎖性をもつことが理想であるが、親の学歴やネットワークが新たな教育格差を生む可能性がある。

〈先生からの補足〉

・中学受験をめぐる母親の実践にもネットワークへの参入を阻み、ネットワーク外の人に情報が届かないように排除するというような事例が報告されている。


(3)溝田班

・発表者:岡田

・発表範囲:第13章「ソーシャル・キャピタルの世代間継承」

[概要]

 両親と子供の社会関係資本には関連性があり、親から子へ社会関係資本が継承される可能性がある。家庭内・家庭外で利他性に関する教育を受けた認識がある人は、一般的互酬性が高まる。しかし、負の互酬性を継承する場合もある。

〈質疑応答〉

質問1:一般的互酬性とは何か。

回答1:本章からそのまま引用すると、人に何かをしたらそれが返ってくるということ。しかし、実際には社会全般の互酬性を指すと考えられる。

質問2:両親と子供の気質が高いということはどういうことか。

回答2:両親の特徴は子供に影響されるということ。

〈先生からの補足〉

・一般的互酬性はどの人に対してもお互い様だと思って行動することで、その逆の特定的な互酬性は◯◯さんだからお互い様だと思って行動すること。


(4)榊原班

・発表者:木下明美

・課題本:『ソーシャル・キャピタルと社会――社会学における研究のフロンティア』

・発表範囲:第8章「災害からの復旧・復興と地域コミュニティ――新潟県中越地震の事例から」

[概要]

 災害、その後の復旧・復興は、地域特性によって多様である。震災前のソーシャル・キャピタルの有無はその後に影響を与え、震災前と後で社会ネットワークが変化する。

〈質疑応答〉

質問1:村仕事を通じた協力関係とはどのようなものか。

回答1:道普請などの農作業が具体例として取り上げられていた。

質問2:災害の復旧・復興におけるユニークな側面とは何か。

回答2:それぞれの災害において、固有の問題を持っているということ。

質問3:スコープとはどういう意味か。

回答3:焦点や範囲という意味。

〈先生からの補足〉

・著者の情報を調べることが重要。


(5)榊原班

・発表者:木下明美

・課題本:『ソーシャル・キャピタルと社会――社会学における研究のフロンティア』

・発表範囲:終章「ソーシャル・キャピタルの生成過程に関する試論」

[概要]

 ソーシャル・キャピタルの生成過程には、非意図的な生成過程と意図的な生成過程の2種類存在する。生成過程において、利他的利己主義と互酬性は重要な役割を果たす。互酬性が広がっていけば、基盤としてソーシャル・キャピタルも構築されていく。

〈質疑応答〉

質問1:「行為者は直接的なアウトプットとしてのソーシャル・キャピタルの形成を意図」について説明してほしい

回答1:副産物としてのソーシャル・キャピタルに対し、直接的で意図的なアウトプットであるということ。

質問2:自分の効用が高まるとはどういうことか。

回答2:自分の利益になると思わないと人とのつながりをもとめないということ。

〈先生からの補足〉

・マッチングサイトなど、ニーズのある人同士を結びつけること自体をビジネスにしているものを両面市場と呼ぶ。


3 まとめ

 今回の発表では、社会関係資本における具体的な負の側面についてあげられていた。特に、親の学歴やネットワークが新たな教育格差を生む可能性があるということは懸念すべきことであるといえる。一方で、震災以前の社会ネットワークの状態が復旧・復興過程に影響を与えるなど、社会関係資本の重要性も再確認できた。

 2冊目は1冊目と違い、社会関係資本という統一されたテーマで輪読が行われた。しかし、同じ論点に対しても厳密には主張が異なることも多く、それぞれの文献において色があったように感じた。また、1冊目は全く異なるテーマで輪読が行われているようで、人間関係という点でどの本も一貫していた。つまり、1冊目のそれぞれのテーマは直接的に社会関係資本と結びつく事柄であるということだ。2冊目の輪読を終えた今、改めて1冊目を精読することで新たな問いが生まれると私は考えた。


作成:田中

編集:榊原

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