2025年度卒研ゼミ 第4回 議事録
- Kanaet-Lab
- 6月13日
- 読了時間: 8分
更新日:6月16日
2025年度卒研ゼミ第4回の議事録です。
日時:2025年5月28日(水)13:10-14:40
会場:DW704
参加者:12名 髙橋、川瀬班(3名)、鈴木班(4名)、三澤班(4名)
欠席者:1名
1 連絡事項
・卒業論文の提出と発表の日程を確認すること
2 個人発表
・発表者:森田
[概要]
アイドルファンの無報酬労働がどのような意識のもとで行われているのか、またファン行動のモチベーションにどのような意味づけがなされているのかを明らかにすることを目的として、主に女性ファンにインタビューを行う調査を予定している。アイドルはしばしば「偶像」や「虚構」として捉えられる存在であり、特に男性ファンにとって女性アイドルは一対一の関係性や所有欲に結びつき、現実世界との関与が強い傾向がある。一方、女性ファンが支持する男性アイドルに対しては、虚構の世界の中で推し同士の関係で完結することが多く、現実と虚構のバランスを保ちながら、時に現実を受け止め構築するような側面も見られる。ファンからアイドルへの愛情には、ロマンティックな愛と現実的な愛の両面が存在し、その捉え方や在り方も多様である。調査では、スノーボールサンプリングの方法を用いて10人程度のアイドルファンを対象に、ファン歴やファン同士のネットワークや具体的なファン活動内容、さらに無報酬労働の実態や動機についても詳しく聞き取りを行う予定である。
〈質疑応答・コメント〉
質問1:スノーボールサンプリングとはどのようなものか。
回答1:自分自身を起点として、知人や関係者などの人間関係を通じて調査対象者を拡大していく調査方法。既に調査を行った対象者に対して、新たな調査協力者を紹介してもらい、その紹介先にも同様の依頼を繰り返すことで、連鎖的に調査対象者を集めていく方法である。
質問2:無報酬労働である、「アイドルと同じ商品を購入したい」という購買意欲はファン自身の経済的余裕も関係するのではないか。
回答2:「なぜ使うのか/使いたいと思うのか」という動機や意味づけのほうに注目しており、経済的格差や制限を主題にしていないため、調査範囲ではない。
質問3:調査目的の「ファン行動を意味づける」とはどういうことか。自己理解の意味合いで使用されているのか。
回答3:ファン行動を無報酬労働と捉えることについて回答者がどう感じているか、ということ。回答者本人が自分を理解するための調査ではない。
質問4:モチベーションに関して、インタビュー調査での回答の想定する回答はあるか?
回答4:自ら進んでアイドルのための広告塔になる理由を探って、得られた回答をモチベーションと関連して考えたい。
・発表者:山口
[概要]
ファッション雑誌におけるコーディネートの特集を通じて、恋愛や結婚がどのように位置づけられているのかを明らかにすることを目的とする。特に、女子会やデートといった具体的な場面に応じた服装の違いや特徴に注目する。先行研究では、女性誌がその時代における理想の女性像を反映するメディアであり、服装は社会的地位や経済状況、性格などを表す手段として機能するとされており、そこには結婚に対する一定の期待や価値観が読み取れる可能性がある。調査対象は、結婚適齢期の女性を読者層とするファッション雑誌の1年分のテキストであり、そこから恋愛や結婚に関する価値観や期待がどのように表現されているのかを読み取ることを目的とする。分析対象は主に第一特集で扱われるコーディネートの画像とテキストであり、服の形や色、使用されているアイテムに注目する。特に、女性らしさはスカートやパンツなどの「下の服」に表れやすい傾向があると仮定し、そこに恋愛・結婚との関連を見出していく。今後は、『CLASSY.』を分析対象とする理由を明確にしつつ、画像とテキストの収集を本格的に始める予定である。
〈質疑応答・コメント〉
質問1:結婚適齢期とは具体的に何歳くらいのことか。
回答1:明確な定義は存在しないが、現代の目安では20代後半から30代前半を指す。
質問2:『CLASSY.』の対象読者層が結婚適齢期の女性であると判断した理由は何か。
回答2:以前参照した論文の中で、『CLASSY.』の読者層が結婚適齢期の女性であると記述されていたため、その情報をもとに対象読者層を判断した。
質問3:恋愛や結婚の位置づけとは具体的に何を想定しているか。
回答3:雑誌内の場面設定に着目し、服装特集の掲載頻度や扱いの重要度から読み取っていくことで『CLASSY.』における恋愛の価値や意味合いを明らかにしようと考えている。
質問4:雑誌に掲載される服装と実際の服装にはギャップがあるのではないか。
回答4:雑誌はあくまで理想像を反映するメディアであるため、実際の一般的な服装と乖離があることは必ずしも問題ではなく、むしろ想定内のことと考えている。
質問5:調査項目の色や柄について具体的な定義はあるか。また流行によって変わるのではないか。
回答5:恋愛や結婚に関連してどのような色や柄が用いられているか、つまり人々にどんな理想像として提示されているかを明らかにしたいと考えているため、流行の変化も踏まえつつ、提示される理想の傾向を探ることが目的。
コメント1:メディアの内容は必ずしも現実と一致するわけではないと考える立場がある。受け手がどのように解釈し受け取るかが重要である。
コメント2:「意味づけ」という言葉は、社会学がアプローチする人々の意味世界を捉えようとする視点である。
・発表者:片岡
[概要]
若年出産の母親がメディアの中でどのように描かれてきたかを明らかにすることを目的とする。これまでの研究では、若年出産に関して主に予防やリスクの視点が強調されてきたが、実際に出産した母親自身の声や実態については十分に整理されていない。若年出産者は支援が必要である一方で、協力を得にくい存在とも言われている。本調査では、1957年からの新聞記事約321件を対象に、記事に表れる価値観や社会的規範を分析し、当時の社会が若年出産の母親をどのように見ていたか、そのまなざしを時系列で検証する。記事内容をコード化し、母親の語られ方の変遷を追う。
〈質疑応答・コメント〉
質問1:若年出産とは、具体的にどのような年齢を指しているのか。
回答1:厚生労働省の定義や多くの先行研究では、10代での出産を若年出産としているが、単なる年齢ではなく社会がどのように『若年出産』を捉えてきたのか、ということを特に重視している。
質問2:若年出産に関して「予防」とは、具体的に何を指しているのか?
回答2:主に避妊の推奨や、10代で妊娠・出産をしないようにするための性教育などが挙げられる。
質問3:調査結果について、現時点で予想される傾向はどんなものか。
回答3:実際の若年出産を経験した母親に対して、社会がレッテルを貼ったり、否定的な表現で語ったりしている可能性があると考えている。
質問4:特定妊婦とは、どのような人を指すのか。
回答4:精神的・経済的な困難を抱えており、特に支援が必要とされる妊婦のことを指す。
質問5:時系列の区分はどのように行う予定なのか。
回答5:時代ごとにまとめると範囲が広くなりすぎる可能性があるため、おおよそ5年〜10年ごとの変化に着目する予定。
質問6:特定妊婦への支援は誰が行っているのか。
回答6:「特定妊婦」という言葉は、国の支援制度の対象となる妊婦を指すものであり、主に行政機関などが支援を行う。
・発表者:日野
[概要]
「旅行と親子関係」というテーマから方向性を再検討し、①父の日のあり方、②父と子の地域性、③親のコミュニティ、④専業主婦といった観点の中から検討している。①については、母の日に比べて父の日の存在感が薄く、マーケティングや雑誌などにおける父親の不在や「父親欠如」の問題と関連づけられる可能性がある。②では、地域によって父親の育児参加率が異なるのではないかという問題意識があり、実際に地域差によって父と子の関わり方に違いがあるという実感に基づいている。③では、ママ友に比べてあまり注目されてこなかった「パパ友」コミュニティの現状や、親同士のつながりの形成に注目する。④では、専業主婦に対する社会的意識の変化や批判的な視点、さらには育児休業の取得前後で父親の意識や行動に変化が見られるのかといった点を考察する。こうした検討は、「母子密着」や「父親欠如」といった先行研究を踏まえつつ、現代の家族や育児における父親の位置づけを再考することを目的としている。
〈質疑応答・コメント〉
コメント1:父の日の起源はアメリカにあり、時系列でその変遷をたどることで日本との違いが見えてくるのではないか。
コメント2:母の日や海外の父の日と比較することで、認識の違いが明らかになる可能性がある。
コメント3:外で働く父親は、家庭内での役割が目に見えにくいため、そのありがたみが反映されにくいのではないか。
コメント4:子どもにとっては、父親が家事を分担し、家庭内での可視的な関与が増えれば、母親と同じくらい感謝の対象になるのではないか。
コメント5:父親から母親への贈り物という視点も、父の日と家庭内の関係性を考える上で興味深い要素となりうる。
コメント6:家庭ごとに父の日に対する認識が異なる可能性もあり、多様な視点からの考察ができるのではないか。
3 まとめ
今回の発表では、それぞれが日常の中で見過ごされがちなテーマを丁寧に掘り下げており、とても興味深かった。特に、アイドルファンの無報酬労働や、ファッション雑誌に見られる結婚観、若年出産への社会的まなざしなど、個人の選択や行動がどのように社会的に意味づけられているのかという視点が共通しており、学びが多かった。父の日に関する議論も、家庭やジェンダーの在り方を考えるうえで新鮮で、現代的な問題意識を感じた。
作成:田中
編集:三澤